リズムに変化を加えるアプローチはジャズに欠かせない手法です。よく使われるのは次の3つ。
- 音を先取りするアンティシペーション
- 音を遅らせるディレイドアタック
- 音を持続させるサスペンション
ここではさらに、リズムをアレンジする手法としてディミニューション(縮める)とオーギュメンテーション(伸ばす)、番外編としてタグノート(ちょい足し)を紹介します。
リズムアプローチを覚えれば、スケールとクロマチックを使ったアプローチノートと合わせて、ジャズのメロディ、アドリブ全てを分析できるようになります。
アンティシペーション
1、3拍目のターゲットノートを先取りして演奏するリズムアレンジです。
元のターゲットノート
半拍アンティシペーション
1拍アンティシペーション
1拍半アンティシペーション
2拍アンティシペーション
2拍アンティシペーションはコードをアンティシペーションさせていると考えることもできます。
ディレイドアタック
ターゲットノートに遅れてアプローチする方法です。
元のターゲットノート
半拍ディレイドアタック
1拍ディレイドアタック
1拍半ディレイドアタック
2拍ディレイドアタックはコードをディレイドさせていると考えることもできます。
サスペンション
前のコードのターゲットノートを次のコードへも持続させるアプローチです。
元のターゲットノート
サスペンションさせたターゲットノート
前のコードのターゲットノートをサスペンションさせるので、次のコードのターゲットノートはディレイドアタックになります。
ディミニューション
音価を短くするリズムアレンジです。メロディやリックにもよく使われる手法で、ディレイドアタックと併用されます。
元のターゲットノート
ディミニューションさせたターゲットノート
Dm7とG7のターゲットノートをディミニューションさせています。結果としてターゲットノートはディレイドアタックしています。
もちろん1音だけディミニューションさせる使い方もできます。
オーギュメンテーション
音価を長くするアプローチです。曲をアレンジするときに使われる手法ですが、コピーしたリックをアレンジするときにも活用できます。
元のターゲットノート
オーギュメンテーションさせたターゲットノート
全てのターゲットノートをオーギュメンテーションさせていますが、1音だけオーギュメンテーションさせる使い方もできます。
番外編:タグノート
タグノートはディレイドアタックと似ていますが、こちらはあくまで飾りとしてターゲットノートの後に付け加える音をさします。
元のターゲットノート
1音タグノートを加えたアレンジ
2音タグノートを加えたアレンジ
3音タグノートを加えたアレンジ
2音、3音のタグノートはそれぞれディレイドアタックやアンティシペーションとも解釈できます。
音の分析(後付け)には正解がなく、さまざまな可能性から自由に選ぶことができます。そこが音楽の面白いところで、自分流の分析を見つけるとそれが個性にもなります。
逆に、これからジャズを学ぶ人にとっては正解がないので難しく感じてしまうかもしれません。大切なことは、自分の耳を尊重することです。
理論や楽譜にとらわれず、自分の耳にはどう聴こえているかを感じとれるようにしてみてください。
Joy Springでのリズムアプローチ
ビバップのメロディには必ずと言っていいほどリズムアプローチが含まれています。ここでは「Joy Spring」を例にどのように使われているか見ていきましょう。
Joy Springメロディ1〜2小節目
Joy Springメロディ1〜2小節目のターゲットノート
Joy Springメロディ1〜2小節目のリズムアプローチ
FM7の5thとC7の13thを半拍アンティシペーションさせているのが分かります。
Joy Springメロディ15〜17小節目
Joy Springメロディ15〜17小節目のターゲットノート
Joy Springメロディ15〜17小節目のリズムアプローチ
GbM7のルートを半拍アンティシペーション。Am7のルート、D7の3rdを1拍ディレイドアタック。17小節目は次に続くGm7のb3rdを1拍アンティシペーションさせています。
16小節目のメロディはII-V-Iリックが元になっています。
元になるII-V-Iリック
D7の3rdまでを1拍ディレイドアタックさせ、最後の3音をディミニューション(DIM)させるとJoy Springのメロディになります。
Joy Springの16小節目のメロディ
このように、ディミニューションはディレイドアタックと併用されることが多いです。
Joy Springのメロディを分析してみましたが、ビバップ曲ならほぼ間違いなくリズムアプローチが使われているので、ぜひ他の曲も分析してみてください。
アプローチ法のまとめが教則本になりました
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