All The Things You Areは1939年にJerome Kernがミュージカル「Very Warm for May」用に書いた曲です。
各コードの3度を使ったメロディ、多くの転調、1コーラスが36小節(8の倍数ではない)など、楽曲研究やアドリブの腕試しに最適なスタンダード。
多くのジャズギタリストがアルバムで取り上げているので、フレージングやリックを学ぶための教科書としても有名です。
ここではリアルブックに載っているコード進行をもとに分析とアドリブ例を紹介していきます。
All The Things You Areコード進行
コード進行分析の目的は各コードの機能を理解し、使えるスケールを見つけ出すことです。
jazzguitarstyle.comでは以下4つの順番で紹介していきます。
- 曲のキーを調べる
- 各コードの機能を調べる
- 使えるスケールを見つけ出す
- アドリブで実際に使ってみる
All The Things You Areのキー
キーは調号と終わりのコードを見ることで判断することができます。
All The Things You Areの調号はフラットが4つ付いているので、キーはAbメジャーかFマイナーになります。
最後のコードがAbMa7になって明るく終わっているので、キー=Abメジャーが最適です。
Abメジャーキーから作られるコードをローマ数字(度数)で覚えておくと、コード進行を分析するときに役立ちます。
転調箇所を探る
キー以外のコードが多く使われている曲は、II-VやV-Iを探し転調箇所を見つけておきます。II-Vには下受け皿。V-Iには矢印を使います。
Aセクションのコード進行分析と使えるスケール
前半8小節のコード進行を度数表記にします。
6、7小節目はAbメジャーに対して何度の音に転調しているかが分かるように、II-Vの後ろにIII(C)の表記を追加しています。
後半8小節は前半8小節全体を5度上に移調しています。
度数が分かればアドリブの材料となる使えるスケールが分かります。
スケールの選択肢は1つではないですが、まずは基本となるスケールの響きを覚えておくことが大切です。
度数別の使えるスケールは「コード進行から使えるスケールを見つけ出す3つの方法」のページで紹介しています。
後半8小節はルートが違うだけで使えるスケールは同じです。
Bセクションのコード進行分析と使えるスケール
前半4小節はGメジャーキー。
後半4小節はEメジャーキー。最後の1小節はFm7(VIm7)へ向かうドミナントです。
Cセクションのコード進行分析と使えるスケール
5小節目までは[A]セクションと同じです。
6小節目のIVm7はAbマイナーキーのコード。同じトニックを持つマイナーキーから借りてきたコードはサブドミナントマイナーと呼ばれます。
使えるスケールはAbマイナースケール=Dbドリアンスケールです。
8小節目のbIIIdim7はIIIm7とIIm7を繋げる役割をするパッシングディミニッシュです。
Cセクション29~32小節目のアドリブ練習例
All The Things You Areの難所は29~32小節目のコード進行。
難しいコード進行が出てきたときはコードトーンとスケールをそれぞれ以下の3つの流れで練習するのがおすすめです。
コードトーンの練習法
- コードトーンをルートから弾いてコード進行の響きを覚える
- コードトーンを滑らかにつなげて自然な流れを作る
- コードトーンを使った同じモチーフを使ってアドリブする
スケールの練習法
- スケールをルートから弾いてコードに対するスケールの響きを覚える
- スケールを滑らかにつなげて自然な流れを作る
- スケールを使った同じモチーフを使ってアドリブする
はじめは1つのポジションにしぼって練習していくと、ネック上の音の配置も覚えられるので効率的です。ここでは3rdポジション(3フレットに人差し指を置いた時に弾ける範囲)で紹介していきます。
各コードのルートからコードトーンを弾くー上昇
各コードのルートからコードトーンを弾くー下降
コードトーンを滑らかにつなげる練習
一番近い次のコードのコードトーンへつなげていきます。
モチーフを使った練習
モチーフはどんなものでも構いません。5音以内が発展させやすいのでおすすめです。今回は2つのモチーフを使って練習します。
各コードで使えるスケールをルートから弾く
スケールを滑らかにつなげる
モチーフを使った練習
Bdim7でFコンディミを使う
Bdim7はBbm7に向かう役割です。Bbm7に向かう役割のコードはもう1つあります。それがF7です。
Bbm7のコードトーンをFをルートにして見るとF7(#9、#11、13)コードになります。
これらのテンションが入るスケールはFコンディミです。つまりBdim7をF7と捉えてFのコンディミニで演奏することができます。
Fコンディミを使ったアドリブ例
Bdim7をF7と捉えることで、その前にあるCm7をIIIm7ではなくIIm7と捉え、II-V-Iリックを使ってアドリブすることも可能です。
コード進行に対する考え方やスケールの選び方は一通りではないので、理論にとらわれず自由な発想で考えることも大切です。
29~36小節目のアドリブ例
29~32小節目の練習のまとめとして最後の8小節をループしたアドリブに挑戦してみましょう。
All The Things You Are アドリブ例
Abメジャースケールを中心にII-V-Iリックとコードトーンを使ったアドリブ例を楽譜にしたので参考にしてみてください。
ギタリストのアルバム
All The Things You Areを収録しているギタリストのアルバム一覧です。それぞれのアプローチの違いを聴き比べてみてください。
この記事へのコメント
質問失礼いたします。
9小節目のCm7のところで使えるスケールなのですが、私もエオリアンだと思うのですが、
The encyclopedia of Jazz guitarという書籍の中にフリジアンとドリアンとしか書いていません。
これはどういう解釈なのでしょうか?
あとBセクション7小節目のEM7のところもリディアンとしか書かれていません。
こちらはイオニアンも書かれていれば、トニックリディアンも使えるという意味にもとれるのですが、
イオニアンの記載がないのはどういう解釈と思われますでしょうか?
よろしくお願いいたします。
フリジアン:Cm7をキーAbメジャーの3番目のコードと解釈してのフリジアンではないでしょうか?
ドリアン:これは理論的な解釈がないので、単純にドリアンの響きが好きなのではないでしょうか?
リディアン:イオニアンの響きが嫌いなのではないでしょうか?
その本の著者にとってはエオリアンよりもフリジアンとドリアンが好き。イオニアンよりもリディアンが好き、ということだと思います。
いつもご回答ありがとうございます!
なるほど、そういう解釈もありなのですね。
音楽だから当然か。。。
理論的な分析も大事ですが、好き嫌いも大事なんですね。
そうですね。最終的には理論に関係なく、自分の好きな響きのスケールを選ぶようになっていくと思います。