アッパーストラクチャートライアドの考え方などは理解したのですが、実際多く使われているアッパーストラクチャートライアドはどのディグリーコードに対して何度上のトライアドなのでしょうか?
理論書を見ると、全てのディグリーコードでこのトライアドはオルタード的、このトライアドはコンディミなどと列挙されており、分かりやすい反面、結局どれから手をつければいいのか迷っています。
実際のジャズミュージシャンが良く使っているものや、このアッパーストラクチャーはこのアーティストが良く使うなどを紹介していただけませんか?
アッパーストラクチャートライアドの使用統計
コピー譜で紹介しているギタリストの演奏から統計をとってみました。2人以上が使ったアッパーストラクチャートライアドは以下の通りです。
Ma7で使うアッパーストラクチャートライアド
- 5度上のメジャートライアド(5th-7th-9th)
- 6度上のメジャートライアド(6th-R-3rd)
m7で使うアッパーストラクチャートライアド
- 2度上のマイナートライアド(9th-11th-13th)
- 5度上のマイナートライアド(5th-b7th-9th)
- b7度上のメジャートライアド(b7th-9th-11th)
m7(b5)で使うアッパーストラクチャートライアド
- b7度上のメジャートライアド(b7th-9th-11th)
7で使うアッパーストラクチャートライアド
- b2度上のマイナートライアド(b9th-3rd-b13th)
- 2度上のメジャートライアド(9th-#11th-13th)
- b3度上のマイナートライアド(#9th-#11th-b7th)
- b5度上のメジャートライアド(#11th-b7th-b9th)
- 5度上のマイナートライアド(5th-b7th-9th)
- 6度上のメジャートライアド(13th-b9th-3rd)
- b7度上のメジャートライアド(b7th-9th-11th)
今回の統計はカート・ローゼンウィンケル、マイク・モレーノ、ラーゲ・ルンド、ピーター・バーンスタイン、ジョナサン・クライスバーグの5人です。以下各ギタリストの実際のフレーズ例です。
カート・ローゼンウィンケル
Along Came Bettyでのアッパーストラクチャートライアド使用統計
和音で使用
コード | トライアド | サウンド |
Maj7 | 5度上のメジャー | 5th-7th-9th |
m7 | 5度上のマイナー | 5th-b7th-9th |
m7 | b7度上のメジャー | b7th-9th-11th |
m7(b5) | b5度上のオーグメント | b5th-b7th-b9th |
m7(b5) | b6度上のメジャー | b13th-R-b3rd |
m7(b5) | b7度上のメジャー | b7th-9th-11th |
7 | b5度上のメジャー | #11th-b7th-b9th |
7 | b7度上のメジャー | b7th-9th-11th |
7 | 6度上のメジャー | 13th-b9th-3rd |
7 | b2度上のマイナー | b9th-3rd-b13th |
単音で使用
コード | トライアド | サウンド |
Ma7 | 5度上のメジャー | 5th-7th-9th |
Ma7 | 6度上のマイナー | 6th-R-3rd |
m7 | 5度上のマイナー | 5th-b7th-9th |
m7 | b7度上のメジャー | b7th-9th-11th |
7 | b3度上のマイナー | #9th-#11th-b7th |
7 | b5度上のメジャー | #11th-b7th-b9th |
7 | b5度上のオーグメント | b5th-b7th-9th |
7 | b7度上のメジャー | b7th-9th-11th |
7 | 6度上のメジャー | 13th-b9th-3rd |
Along Came Betty
和音
Bm7で使うF#mトライアド(4:09~)
Em7(b5)で使うBbaug、C、Dトライアド、A7で使うEb、Bbm、Fトライアド(6:02~)
F7で使うBトライアド(7:20~)
Fm7で使うEbトライアド、Bb7で使うAbトライアド(8:08~)
G7で使うF、Dbトライアド(8:58~)
GMaj7で使うDトライアド(9:43~)
単音
GMa7で使うDトライアド(3:30~)
F7で使うEbトライアド(3:50~)
Bm7で使うAトライアド(4:20~)
Bbm7で使うAbトライアド(4:22~)、E7で使うC#トライアド(4:26~)
Bbm7で使うFmトライアド(5:08~)
AbMa7で使うFmトライアド(5:22~)
F#7で使うCトライアド(5:39~)
A7で使うEbトライアド(5:49~)
F7で使うAbmトライアド(6:19~)
G#7で使うDトライアド(6:37~)
Bb7で使うEaugトライアド(7:09~)
マイク・モレーノ
Stablemates、Woody’n You、Aireginでのアッパーストラクチャートライアド使用統計
コード | トライアド | サウンド |
Maj7 | 5度上のメジャー | 5th-7th-9th |
Maj7 | 6度上のマイナー | 6th-R-3rd |
m7 | 2度上のマイナー | 9th-11th-13th |
m7 | 4度上のメジャー | 11th-13th-R |
m7 | 5度上のマイナー | 5th-b7th-9th |
m7 | b7度上のメジャー | b7th-9th-11th |
m7(b5) | b2度上のメジャー | b9th11th-b13th- |
7 | b5度上のメジャー | #11th-b7th-b9th |
7 | b2度上のマイナー | b9th-3rd-b13th |
Stablematesから
Em7で使うD、A、F#mトライアド(1:01:42~)
Woody’n You
Bb7で使うEトライアド(0:24~)
Cで使うDbトライアド(0:51~)
Abm7で使うEbmトライアド(0:58~)
DbMa7で使うBbmトライアド(1:45~)
Bm7で使うAトライアド(2:54~)
Fm7(b5)で使うGbトライアド(3:00~)
Airegin
DbMaj7で使うAbトライアド(1:17~)
BbMaj7で使うFトライアド(2:12~)
Fm7で使うCmトライアド(2:18~)
ラーゲ・ルンド
Celiaでのアッパーストラクチャートライアド使用統計
コード | トライアド | サウンド |
m7(b5) | b7度上のメジャー | b7th-9th-11th |
7 | b6度上のメジャー | b13th-R-#9th |
7 | b5度上のメジャー | #11th-b7th-b9th |
7 | 6度上のメジャー | 13th-b9th-3rd |
Celia
Am7(b5)で使うFトライアド、D7で使うBbトライアド(3:09~)
Am7(b5)で使うFトライアド、D7で使うBbトライアド(3:09~)
ピーター・バーンスタイン
Nobody Else But Me、Dewey Squareでのアッパーストラクチャートライアド使用統計
単音での使用
コード | トライアド | サウンド |
7 | b2度上のマイナー | b9th-3rd-b13th |
7 | b3度上のマイナー | #9th-#11th-b7th |
7 | 5度上のマイナー | 5th-b7th-9th |
dim7 | 4度上のメジャー | 11th-13th-R |
dim7 | b6度上のメジャー | b13th-R-b3rd |
和音での使用
コード | トライアド | サウンド |
Maj7 | 2度上のサスフォー | 9th-5th-6th |
Maj7 | 6度上のサスフォー | 6th-9th-3rd |
7 | 2度上のメジャー | 9th-#11th-13th |
7 | 6度上のメジャー | 13th-b9th-3rd |
dim7 | 4度上のメジャー | 11th-13th-R |
Nobody Else But Me
Fdim7で使うBbトライアド(4:06~)
G7で使うAbmトライアド(4:19~)
Bb7で使うFmトライアド(4:39~)
D#dim7で使うBトライアド(4:51~)
Fdim7で使うC#トライアド(9:01~)
G7で使うAbmトライアド(9:01~)
C7で使うEbmトライアド(9:01~)
和音
F#7で使うD#トライアド、BMaj7で使うC#sus4トライアド、F7で使うGトライアド、EMaj7で使うC#sus4トライアド(6:25~)
D#dim7で使うBトライアド(7:15~)
CMa7で使うDsus4、Asus4トライアド(7:25~)
Dewey Square
Bb7で使うCmトライアド(2:27~)
Eb7で使うGbトライアド(2:27~)
Bb7で使うGトライアド(2:27~)
ジョナサン・クライスバーグ
Out Of Nowhereでのアッパーストラクチャートライアド使用統計
コード | トライアド | サウンド |
Maj7 | 2度上のメジャー | 9th-#11th-13th |
m7 | 2度上のマイナー | 9th-11th-13th |
m7 | b7度上のメジャー | b7th-9th-11th |
7 | b5度上のメジャー | #11th-b7th-b9th |
7 | 5度上のマイナー | 5th-b7th-9th |
7 | 6度上のマイナー | 13th-b9th-3rd |
7 | b7度上のオーグメント | b7th-9th-#11th |
7 | 2度上のメジャー | 9th-#11th-13th |
Out Of Nowhere
D7で使うAbトライアド(2:29~)
Eb7で使うBbm、Cm、Dbaug、Fトライアド(3:25~)
Bbm7で使うCmトライアド(5:41~)
Bbm7で使うAbトライアド(8:15~)
GMa7で使うAトライアド(8:19~)
トライアドに関連した教則本
現代のギタリストは2つのトライアドを組み合わせたヘキサトニックスケールというコンセプトを使っています。
それを体系づけて詳しく紹介しているのがJerry Bergonzi inside improvisation vol.7 Hexatonicsです。
日本語版はありませんが、内容のほとんどがトライアドパターンの紹介で文章は少ないので、輸入版でもある程度は理解できると思います。
コンピング用
トライアドをコンピングに活用する「Creative Chordal Harmony for Guitar: Using Generic Modality Compression」という本もあります。
日本語版はありませんが、こちらもパターンの紹介なので輸入版でも理解できると思います。
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