David Oakesのサイトで公開されているA Lesson From Jimmy WybleのPDFを許諾を得て翻訳編集しました。
内容は2008年1月31日にMI Hollywoodで行われたクリニックの一部。
コードスケール(コードで弾くスケール)を使ったJimmy流の練習方法が学べます。どれも面白い響きがするのでぜひ挑戦してみてください。
コードを使ってスケールを弾く
コードでスケールを弾くこと(コードスケール)は、ハーモニーに対する感覚を発展させる最良の方法です。ここでは1-7-9-11 ボイシングと1-7-3-5ボイシングの2つを使って紹介していきます。
練習方法
- 各コードをゆっくりと正確に演奏します。指使いに注意してください。押弦はセーハを使いません。ピッキングは親指(p)、人差し指(i)、中指(m)、薬指(a)です。
- 音名だけでなく、ボイシング(度数)を意識してください。
- コードを2つに分割し2声で弾きます。2声同士が同時に鳴らないように、弾いたら指を浮かせてミュートします。
まずはCメジャースケールのコードスケールで練習してみましょう。
R-7-9-11で積み上げたボイシング
R-7-9-11ボイシングを2声に分割する練習
2声をそれぞれ分離するため、1度弾いたら指を浮かせミュートしてから次の2声を弾きます。これは押弦する指の独立性を高めるのに効果的です。ピッキングはP-MとI-Aを交互に使います。
私が自分自身に与えている課題の1つに、前日とは違う方法でギターを弾くというのがあります。エクササイズを少し変更するだけでもいいんです。次の譜例はこれを達成するための例です。上の譜例を昨日練習したとしたら、今日は上声の2音を反転させ、ピッキングをP-AとI-Mに変更します。
R-7-3-5で積み上げたボイシング
今度は -7-3-5のボイシングで練習ましょう。
コードスケールを弾く上での注意点。
- コードを形だけで覚えないようにします。各弦の音の動きを意識すると、形ではなく音として捉えることができます。
- 人差し指のセーハを使う方が快適なものもありますが、あえて、4つの音に対してそれぞれ4本の指で押さえます。これは最終的に、指の独立性、強さ、そしてストレッチに役立ちます。
R-7-3-5ボイシングを2声に分割する練習
上声2音を反転させた譜例
R-7-3-5ボイシングのアレンジ
もう1つの練習方法は、スケールに変更を加えることです。ここではメジャースケールをb3と#4thにしたスケールのボイシングを弾いてみましょう。
Cメジャースケール
Cリディアンb3スケール
私はこれを、Cメジャーのコードスケールと交互に弾くのが好きです。そうすることで音の比較がしやすくなるからです。
- 各弦のどの音がメジャーのコードスケールと違うか意識しながら弾いてください。
- 新しい響きを聴いて気に入ったものがあれば、それをアイデアに活用してください。これについては後で詳しく説明します。
- セーハは使わずに押さえてください。
アレンジしたR-7-3-5ボイシングを2声に分割する練習
上声2音を反転させた譜例
ボイシングに変更を加えるアイデア
私がハーモニーの実験で好きなのは、コードフォームの中から1音動かして、それを実践に応用していくことです。たとえば、上の譜例で紹介したCmMa7を使って音を動かすと、さまざまな響きに変化します。
- 7thを半音下げるとCm7になります
- さらに半音下げるとCm6になります
- ルートを半音下げ7thにするとCm6/Bになります。
- 7thをオクターブ上げるとジャズで一般的なボイシングになります。このボイシングを使う人は少ないです。
CmMa7を、ベースをCにしたGオーグメントトライアドとして見てみましょう。
- ベース音をFに変えるとG7(#5)になります。
- CをDbに変えるとDb9(#11)になります。
- G7(#5)のルートを6弦に持ってくると別のG7(#5)になります。
G7(#5)を2声に分割し、Cマイナーのii-v-iに応用してみましょう。
演奏ポイント
- Dm7は、1-7-3-5のボイシングから5を取ったものです。3のF音がメロディーになります。3拍目のAb音はベース音を動かしただけです。
- G7も1-7-3-5から5を取ったボイシングですが、オクターブ低くしています。私は全ての弦でコードスケールを練習しています。
- 2小節目の3拍目と4拍目は、G7(#5)を2声に分割したものです。
- Cm6ではコードの音を動かしています。
David Oakesの後書き
このレッスンでは、Jimmyがどのように練習し、考えを整理し、新しい響きを作り、どのように応用していたかが分かります。どれもとてもシンプルであると同時に素晴らしいです。
MIでこのクラスを受講した生徒はどれだけ幸運でしょうか。87歳の男が深い考えと知恵を教えてくれるんですがから。
このレッスンはさらに1時間続きました。Jimmyは他のアイデアも生徒たちと共有し、次週も続けようと考えていましたつまり、今回のようなレッスンをまた受けれるんです。
彼は最後に、エチュード (「Art of Two Line Improvisation」のエチュード 24) を抜粋し、最初の数小節を例にどのように作曲したかを説明し、デモンストレーションしました。
JimmyはMIを第2の故郷にしました。私は、彼の考えや概念を共有すると同時に、彼のアイデアをあなたと共有できることをとても嬉しく思います。
このレッスンを楽しんでいただけることを願っています。
翻訳編集後記
分かりやすくするため、PDFには載っていなかった楽譜もいくつか追記しています。
Jimmyはとにかくセーハを使いません。これは実際やってみるとすごく難しい。とくにセーハに慣れていると余計に。これを改善するためには手のストレッチが必要になり、結果として左の強化につながるという、まさにJimmyが言った通りになります。
ほんのちょっとでもいいから昨日と違うことを弾く、というのは本当に素敵で、これを読んでから私も実践しています。ウォーミングアップに使っているスケールを変えてみたり、練習しているリックの音を変えたり、使うコードを変えたりなどなど。
後半で出てきたメジャースケールをb3と#11するスケールはリディアンb3と呼ばれ、ハーモニックメジャースケールの3番目のモードになります。今でこそ当たり前のハーモニックメジャースケールをかなり前から好んで使っていたことに驚きました。
実際に練習してみて思ったのは、今でも新鮮でコンテンポラリーな響きになっていること。自分の演奏に活用するには時間がかかると思いますが、確実に耳と指が進化してくれるので、引き続きJimmyの練習方法を追ってみたいと思います。
ぜひみなさんもJimmyの練習方法を活用して、独自のボイシングやフレーズ作りを満喫してください。
この記事へのコメント