※David Oakesから使用許諾を受け原著Two Line Primer.pdfを翻訳編集しています。
Davidのメモ:この資料は、2008年7月10日にMIで行われた授業から抜粋したものです。夏学期の最初の授業でしたが、生徒たちにとっては最終学期にあたり、すでに1年以上のトレーニングを受けてきました。ギター初心者ではないですが、Jimmyの対位法に触れるのは初めてです。
ここでは、Jimmy流の対位法(2つの旋律を同時に演奏する)の基礎練習が学べます。いくつかのテクニックは以前のレッスンで取り上げているので復習のつもりで取り組んでみてください。
ここでの私の目的は本を書くことではなく、Jimmyの授業計画をまとめることです。私は教師として、同じ情報をさまざまな方法で提供することに価値を見出してきました。これは、生徒が音楽の概念を理解するのにとても有益な方法です。
Jimmyはこれらの概念を、授業を通じ発展させながら用います。これが同じ内容でもその時によって解説法方が変わっている理由です。
このレッスンも有益になることを願っています。
コードフォームを使った練習
5弦ルートのCMa7コードを使いましょう。ルート-5th-7th-3rd(私は10thと呼んでいます)の順で積み上げたボイシングです。
押弦、ピッキングともに人差し指から小指までの4本を使います。セーハは使いません。ピッキングする指は弾く前に弦にセットしておきます。
次に各音をCメジャースケールに沿って上昇させてみましょう。CとGは全音上がってDとAに、BとEは半音上がってCとFに。結果としてDm7になりますが、コードを動かしたと考えるのではなく、各音をスケールに沿って上昇させたと考えてください。
つまりコードを塊としてとらえるのではなく、各音独立した声部ととらえ、それぞれがCメジャースケールに沿って上昇したという考え方です。
セーハは使わず各音各指で押さえます。セーハは簡単で便利ですが、それゆえ、あえてセーハを使わないことは演奏スキルを上達させることにもなります。
コードボイシングから2音選んで弾く
CMa7とDm7を使って、それぞれのボイシングを2音ずつ選んで弾く練習をしてみましょう。
- ルートと7th
- 5thと3rd
それぞれの音が重ならないように、次の音を弾くときはしっかりとミュートします。
Ex1 基礎練習
練習フレーズは常に変化させることが大切です。その方法の1つは音の組み合わせを変えることです。
- ルートと3rd
- 5thと7th
Ex2はこの2つです。外側(5、2弦)、内側(4、3弦)の順で弾くことから、”アウトサイドイン”と呼んでいます。音程の大きいところ(10度)から小さいところ(3度)に動きます。
コードフォーム内の音を自由に動かすことは対位法の演奏にとってとても重要な要素です。
Ex2 アウトサイドイン
Ex2を逆にして小さい音程から大きい音程にしたのがEx3です。”インサイドアウト”と呼んでいます。
Ex3 インサイドアウト
Dm7以降もCメジャースケールでハーモナイズして、同じように練習してみてください。全てセーハをせずに押弦してください。またコードフォームを動かすのではなく、各音をCメジャースケールに沿って上昇させているという感覚を忘れないように。
各コードEx1~3にあてはめて、自然に弾けるようになるまで練習してください。
新しいボイシングを使った練習
Cトライアドの5thを半音上げ、3rdを全音下げしたボイシングを使ってみましょう。ここではこのコードをC+9と呼びます。
今度はC+9の#5thを全音上げ、9thを半音上げ、ルートを半音下げます。
コードを形でとらえず、各音がどう動いているか、そして、その結果コードがどうなったかを考えます。決してコードの形が先にきてはいけません。
このボイスリーディングを短3度間隔で弾いてみましょう。ピッキングは親指、人差し指、中指の3本で行います。
Ex4 短3度で動かす練習
今度は2音+1音に分けて弾いてみましょう。これはアウトサイドインになります。
Ex5 2音+1音に分割
最後は使う弦を変えて弾いてみましょう。押弦する指のストレッチにもなります。
Ex6 使用弦を変えた例
Davidのメモ:Jimmyはこの練習を3弦ルートのポジションでも続けました。
対位法の演奏に必要なスキルを習得するために、生徒にこれらの練習を1週間するように伝えました。最後の5つの例は、Jimmy著「Classic Country」からの抜粋で、カリキュラムの一部にもなっています。
Classic Countryは絶版になっていますが、Jimmyの別の著である「Concepts for the Classical and Jazz Guitar」もおすすめです。ここで紹介したExはこの本を元にしたもので、両手の独立性は言うまでもなく、アイデアを変化、開発し常に操れるようにするのためのものです。
私はいつもJimmyのコンセプトとレッスン教材を自宅に持ち帰り、それらに取り組みます。
Jimmyの音楽ってこんなにシンプルなの?と思わず思ってしまうJimmyのフレーズアイデアを紹介します。
Jimmyの音楽の第一印象はとても複雑に聴こえますが、コピーして分析してみると、とても分かりやすく、学びやすいものになっています。
次の譜例はJimmy作曲「Two Lines For Barney」の一節です。 「Jimmy’s Sketchbook Volume 2」でこのフレーズを聴くことができます。音源は半音上ですが、読みやすさと分かりやすさを優先して半音下げて記譜しています。
- 1拍目はアウトサイドインで弾くAmトライアド。2拍目からはトライアドの周りの音を使ったフレージング。Jimmyが得意とする演奏です。
- アウトサイドインで弾くE+9。ここではAm6と捉えます。Jimmyがどうやってアウトしているか疑問に思ったら、このフレーズがどれほど美しいかを確認してください。
- アウトサイドインで弾いていますが、フレーズはE7からの上昇なので、ここでは改造版のアウトサイドインと呼びます。
- 改造版のアウトサイドインを使ったAm6コード。2で出てきたAm6の別ボイシングで、トップノートの上昇フレーズに繋がります。
- 改造版のアウトサイドインを使ったAmトライアド。
終わりに:このレッスンが、この素晴らしいスタイルで演奏する方法を学ぶきっかけになることを願っています。
Jimmyは先週の木曜日、生徒たちに「これは継続的に続ける練習であり、今後何年も続く課題である」と伝えました。これはJimmy自身がこのスタイルを演奏するために取り組んできた方法でもあり、音楽の楽しさと創造性の素晴らしさを実感させてくれるのです。
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