この内容は、Jimmy Wybleが2008年3月13日にMIで行った授業を書き起こしたものです。
Jimmyは静かに、控えめに、そしてとても礼儀正しい態度で生徒たちの前に立ち、創造的なアイデアを一斉に浴びせました。生徒たちはあわててノートを手に取り、87歳の男に追いつこうと必死になっていました。
私自身、できる限り写譜しましたが、彼のアイデアの約80%ほどしか得られませんでした。
この日ジミーは、「対位法の概念(Contrapuntal Concepts)」のフレーズ12から始めて、スケールパターンをどのように変えていくかを実演。また、ジャズスタンダード「You Stepped Out of a Dream」の最初の8小節を取り上げ、フレーズの展開法を披露しました。
ここで紹介するのはこの2つの要素です。できるだけジミーの言葉を使っていますが、私が追記したものには「編集者のメモ」という見出しをつけています。
この追記と見解が、Jimmyのスタイルと思考プロセスについてのさらなる洞察を与えてくれることを願っています.
*David Oakesから使用許諾を受け翻訳編集しています。原著「Developing Ideas.pdf」
5-1-3-7ボイシング
まずはCメジャースケールの5-1-3-7ボイシングを確認しましょう。
EX1
次にこのボイシングをもとにスケールを弾いていきます。
EX2 5-1-3-7ボイシングを使って弾くスケール
楽譜に記譜した運指はあくまで例なので、他の方法も試して弾きやすい運指を探してみてください。これは全てのEX共通です。タブ譜に頼らず五線譜を読むことで、指板をより深く理解できると同時に読譜の練習にもなります。
Ex3は各コード3種類のフィンガリングで弾く例です。
EX3 各コードのフィンガリング例
Dm7の3小節目とBm7(b5)の3小節目は人差し指のセーハを使います。
Ex4はコードフォームに収まりやすい運指を見つけましょう。そのためにはスケールの上声と最後の音の両方をコードフォームと同じ運指にする必要があります。そこに低音を加えれば完成です。
EX4 スケールとコードの組み合わせ
これらは他の弦でも弾くことができます。次の譜例は、Ex4のFMa7とG7を3種類の運指で弾いた例です。
FMa7とG7のフィンガリング
編集者のメモ:ここでJimmyが生徒に伝えたのは、同じフレーズを別の方法で演奏できないか探すことです。運指を変えたり、使う弦を変えるだけでもいいんです。
そして、課題やアイデアを五線譜に書き出すよう勧めています。五線譜に書くことは練習の一部にもなります。書くことでフィンガリングを変えたり、ボイシングを変えて新たなボイスリーディングを作ることも簡単になります。
Exやアイデア、アレンジを書き留めることは、読譜とフレットボードを理解することにとても役立ち、生徒にとってはミュージシャンとしての総合能力を高めるのに役立ちます。
Jimmyがタブ譜を使わないのはこのためです。タブ譜がフレットボードの理解を狭め、自由に動き回る機会を無くしていると感じています。
You Stepped Out of a Dreamの8小節を使った実例
編集者のメモ:生徒からいつも聞かれるのが「演奏でどう活かすのか?」です。Jimmyはいつもこう答えます。 「あなたがどのように使うかは分かりませんが、私のアイデアをいくつかお見せしましょう」
そしてこれが、今回の授業で起きた魔法です。
You Stepped Out of a Dream最初の8小節
※メロディは著作権の保護のため、お手数ですが原著のPDF(https://www.davidoakesguitar.com/pdf/Developing_Ideas.pdf)を参照ください
You Stepped Out of a Dreamのメロディは各コードの3度に解決しています。まずは1-5-7-3ボイシングを使ってハーモナイズしてみましょう。
Ex5 1-5-7-3でハーモナイズ
編集者のメモ:Jimmyがこのコードフォームを選んだのは、生徒たちが簡単についてこれるようにするためです。とくに深い意味はありません。もし彼が次の日にこの練習をしたら、おそらく違うフォームを選んだことでしょう。ちなみにAbMa7はセーハを使わず各指で押さえます。
5-1-3-7ボイシングに基づいたコードをフィルとして追加できます。
Ex6のは5-1-3-7ボイシングの5と3を半音下げてdimMa7を追加した例です。ここから5-1-3-6ボイシングに解決します。
Ex6 dimMa7を追加
dim(Ma7)の響きは、ジャズギタリストがよく使う13(b9)と同じ構成音です。D13(b9)の一般的なボイシングをいくつか紹介します。
編集者のメモ: Sid Jacobsが、このディミニッシュコードについて詳しく分析してくれました。
コードの低音3つはdimトライドで、トップに7thの音が乗っています。多くのミュージシャンがIコードへの解決を遅らせるために使っているコードです。
b5thとb3rdが、半音上がってメジャーコードに解決する動きはとても古典的なボイスリーディングです、このときのトップノートはディミニッシュスケールの7thや9thが使われます。
ジャズスタンダードでもよく使われる動きで、ジョビン作曲の「Corcovado」で出てくるFdimMa7-F6はJimmyがEx6で弾いた動きと同じです。
D13(b9) のボイシングはCdimのボイシングとしても使えるので、コードネームを間違えることもありますが、響きは間違えられないくらい独特です。
私はいつも、分析における最も重要な要素として、ボイスリーディングに注目しています。
Cdim(ma7) からC6へのボイスリーディングは、低音2つが半音上昇すると同時に、トップの音は全音下降しています。このように、ボイスリーディングに常に耳を傾け、どのように動いているか意識してください。
私はコードを固まりとして捉えるのではなく、各音それぞれを注意深く聴いています。この能力は、コードスケールを練習し、各音がどのように動いているかを注意深く聴くことで得られます。
Ex6の2段目は、Cmi7 和音から下降するボイシングで、最初のコードの下声3音を半音で下降するだけです。トップノートの「G」はそのままです。
このコード進行の捉え方は3つあります。
- Cm7和音は、Eb6またはベースにCを持つEbトライアド。 Bm7(#5)はパッシングコード。 Am7はEb7の裏コードをm7化。
- AbメジャーキーのIII-VI-II-V
- 半音ずつクロマチックで下降
編集者のメモ: コードスケールとボイスリーディングのアイデアは、私が今年初めに投稿した「A Lesson From Jimmy Wyble」と結びついているので合わせて参照してください。
Ex7では、メロディーの間にフィルを追加しています。 2段目の下降するコードはEx6と同じですが、ここでは2弦をトップノートにしたポジションで弾きます。いろいろなポジションで弾けるように常に模索してみてください。
Ex7 フィルを追加
ハーモナイズドスケールを使用することもできます。Ex8は5-1-3-7ボイシングのバリエーションとして5-3-6ボイシングを使ってハーモナイズした例です。
2段目のBbm6で使ったアイアデアは「The Art of Two Line Improvisation」のエチュード7で使用したのと同様です。
Abコードを以前とは違うポジションで弾いていることに注目してください。
Ex8 ハーモナイズドスケール
Ex9のMa7のパターンと2段目のEb9もエチュード7で使ったアイデアを活用したものです。
Ex9 エチュード7のアイデアを活用
Ex10ではMa7で新たなシークエンスフレーズを使っています。CMaj7/Gから始まり、CMaj9、Cトライアドと3つのコードフォームが出てきます。
編集者のメモ: 「You Stepped Out of a Dream」最初の8小節を使った実演は約30分ほど。これらのアイデアは、猛烈な速さで生まれました。
レコーダーを持っていなかったため、記憶力を頼りに全てのExを完成させています。そのためすべてのアイデアを完全に得たわけではありません。
いくつかのExでは私のアイデアを追加していますが、Jimmyの主なアイデアが正しく、そのまま伝わるように心がけました。
「このフレーズJimmyらしくないな」と感じるフレーズがあったら、それはおそらく私が追加したものでしょう。
Jimmyはこの教材を、受講した生徒たちと結び付ける方法を探していました。この授業は学期の最後で、4月からは新しい生徒と新学期が始まります。私も助手として参加できることを願っています。
この資料をダウンロードしたたくさんの人から感想のメールが届いています。もしまだでしたら、ぜひ感想をお聞かせください。
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