Stella by Starlightは1944年にVictor Youngが映画The Uninvitedのために作った曲。多彩なハーモニーを持ち、ジャズスタンダードとして広く愛されています。日本ではパブリックドメインになっているスタンダードの1つです。
1946年にNed Washingtonが詞をつけ、Frank SinatraやHarry Jamesなどの名だたるアーティストがこの曲をレコーディングしています。
ここでは、Stella by Starlightのコード進行を年代順に楽譜にしました。さまざまなアーティストの演奏を聴き比べながら、この曲の魅力を探っていきましょう。
映画The Uninvited 1944年
ステラの原曲は音源にはなっておらず、映画The Uninvitedのオープニングに出てくるのみ。わずか1分の曲ですが、すでに完成された美しさです。
ジャムセッションで演奏するコード進行に慣れているとその違いに驚くはず。(著作権の関係上ここでは紹介できませんが、YouTubeの検索画面で1分の動画を聴いてみてください)
Harry James 1947年
Stella by Starlightがジャズの名曲になったきっかけが、Harry Jamesのバージョンです。この音源は、ステラの最初のレコーディングであり、原曲を大胆にアレンジしています。
イントロではテーマをさりげなく紹介。間奏後はキーを変え、後テーマではメロディーを倍テンにして盛り上げています。
これらのアレンジは、ステラの美しさを引き出すとともに、ジャズの可能性を広げました。
Frank Sinatra 1947年
Stella by Starlightは歌詞によって新たな命を吹き込まれました。その歌詞で最初にレコーディングしたのがFrank Sinatraです。
イントロが追加されただけで、原曲に忠実なアレンジになっています。
Charlie Parker 1952年
1952年に録音されたものの、1995年までお蔵入りしていた秘蔵の音源。それがこのCharlie Parkerのバージョンです。
現在のジャムセッションでよく使われるキーとコード進行で演奏している衝撃。
原曲のコード進行の中に隠された無限の可能性を見つけ出し、自由に即興を展開し、全く違う印象にしています。
Stan Getz 1952年
Stan Getzのバージョンはdim7をII-Vに置き換えたり、随所にII-Vを挿入したりすることで、ハーモニーを豊かにしています。
例えば、[A]セクションの最初の4小節では次のようにコード進行を変えています。
原曲
|Gdim7|Gdim7|D7|D7|
Stan Getz
|C#-7|F#7|GMa7|・/・|
原曲の怪しい雰囲気を和らげるこのアレンジは、後のジャズミュージシャンにも大きな影響を与えました。
Bud Powell 1953年
Bud Powellのソロピアノの名演。KeyをGメジャーに変えていますが、コード進行はほぼ原曲に沿っています。
Chet Baker 1954年
Chet Bakerはライブで何度も演奏しましたが、最初にスタジオ録音したのが1954年のバージョンです。
KeyはGメジャーですが、ジャムセッションでよく使われるコード進行になっています。
Art Blakey & The Jazz Messengers 1956年
Art Blakey & The Jazz Messengersの名演のひとつ。彼らはこの曲を、自分たちのスタイルに合わせて大胆にアレンジしています。
テーマでは、メロディーを崩しジャズらしいフレーズに変え、キメのリズムはブレイキーのドラミングが際立っています。ソロセクションでは、一度だけ現れるリズムアレンジ(楽譜A”の部分)が曲にスパイスを加えています。
Jim Hall 1957年
Jim Hallのギタートリオの名演。Keyとコード進行はStan Getzのバージョンに基づいています。アドリブはメロディーを崩し、変化に富んだフレージング。コンピングでは、ドラムレスらしい4分刻みを使っています。
ジャズギターの技術や表現力を学ぶのにも最適なので、完コピの楽譜も用意しました。
Tal Farlow 1958年2月
Jim Hallと同じKey=Gメジャー、コード進行も同じですが、テンポが速いので全く違う印象になります。
完コピ楽譜も作ったのでTal Farlowの技巧をたっぷり満喫してください。
Miles Davis 1958年
Miles Davisの名演。1958年に録音していますが、発売は1974年。メンバー全員がアドリブではなくテーマ演奏に徹しているのが特徴です。
当時ステラをKey=Bbメジャーで演奏するのは珍しかったはずですが、これ以降Key=Bbメジャーが定着します。
今回楽譜作りに使ったテイクはSpotifyに無かったので、YouTubeのリンクを貼っておきます。
Ella Fitzgerald 1961年
イントロはCペダルを使って、トップのトライアドを半音で動すアレンジ。Ellaの美しいボーカルをより一層引き立てます。このアレンジはエンディングでも使われています。
後テーマに行く前のキメは半音アプローチを使った王道パターンです。
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