My Old Flameは、1934年にメイ・ウエストが歌って一世を風靡した名曲です。作曲はArthur Johnstonで、映画Belle of the Ninetiesの挿入歌として書かれました。
この曲はその後ジャズスタンダードとなり、チャーリー・パーカーやタル・ファーロウなど、多くの名演奏家によって様々な解釈がなされました。ここでは、原曲から1959年までのコード進行の変遷をたどってみましょう。
Mae West 1934年
KeyはEbメジャーでジャズスタンダードの定番A-A-B-Aフォームです。バックはデューク・エリントン楽団。
コード進行は、ドミナントの連続やm7(b5)の効果的な使い方が特徴的です。
映画で使われた音源(1コーラス)とスタジオ録音音源、どちらもコード進行は同じなのでスタジオ版を楽譜にしました。
Ivie Anderson 1934年
メイ・ウエストと同じくバックはデューク・エリントン楽団。イントロが変わっていますが、Keyもコード進行も同じです。
Guy Lombardo 1934年
男性ボーカリストで最初に録音したのがこのバージョン。Guyの弟Carmen Lombardoが歌っています。
キーはGメジャーでイントロが変わっています。
コード進行で原曲と違うのは[A]6小節目のGm7(b5)-C7。原曲ではGキーに移調するとEb7になっている箇所です。
ここのリハモはII-V化が肝です。Eb7をII-V化してBbm-Eb7。BbmのベースをGにしてBbm/G=Gm7(b5)。Gm7(b5)をIIとしてVのC7を追加してGm7(b5)-C7。
長くなってしまいましたが、簡単に言うと、平行調のII-Vは互いにリハモできるです。
Bbm7-Eb7はAbメジャーキーのII-V。Abメジャーの平行調はFマイナー。FマイナーのII-VはGm7(b5)-C7。なのでBbm7-Eb7とGm7(b5)-C7は互いにリハモすることができます。
Peggy Lee 1941年
イントロと間奏が追加され、後テーマはKey=Bbメジャーに転調しています。
コード進行で違うのは、細かいところだと[A]2小節目のBbm6。これはGm7(b5)のベース音がBbになっただけ。4小節目のDb9はFm7(b5)のベース音がDbになっただけです。
大きく違うのは[A]7小節目のCm7。原曲はBb7ですが、8小節目のコードBb7に進みやすくするためII-V化してCm7になっています。7小節目最初のB7はF7の裏コードです。
メロディーの邪魔をしなければ自由にリハモできる好例です。
Count Basie 1941年
1941年に録音されたカウント・ベイシーの名作。ボーカルは当時まだ無名だったLynne Shermanです。
イントロが変わっていますが、テーマのコード進行は原曲とほとんど同じです。
Billie Holiday 1944年
今でも多くのジャズ・ファンに感動を与えているビリー・ホリデーの代表作。
Key=DbメジャーでイントロはI-bIIIdim-II-V。テーマのコード進行は原曲と同じです。
Charlie Parker 1947年
1947年に録音されたビバップの名演
Key=FメジャーでイントロはI-VI-II-V。裏コードやII-Vのリハモが使われていますが、ほぼ原曲のコード進行と同じです。
後半のトランペットはマイルス・デイビス。
Tal Farlow 1954年6月
ギタリストで最初に録音したのがタル・ファーロウ。テーマ[A]はソロ・ギターで弾き、テンションコードやII-Vのアプローチを多用して、原曲の雰囲気を大胆に変化させています。
[B]からはベース、ギターが加わりインテンポに。このアレンジは後に続くギタリストに影響を与えています。
Barney Kessel 1955年
ソロギターで始まる[A]そしてBからベースが入るアレンジはまさにタル・ファーロウの影響ですが、コード進行をシンプルにしてバーニー・ケッセルの個性を発揮しています。
コード進行で特徴的なのが[A]4小節目。Cm7-F7は原曲Fm7(b5)-Bb7の平行調を使ったリハモです。[B]2小節目も同様のリハモになっています。
Herb Ellis 1959年
タル・ファーロウのアレンジと同じく、ソロギターで始まる[A]、そして[B]からバンドが入りインテンポになります。
コード進行で大きく違うのが[A]2小節目。原曲はBm7(b5)-E7ですが、E7のみになっています。
もう1つは[B]の2、3小節目。原曲はAm7(b5)-D7-Gb7。II-Vを使わずAb7-G7で緊張感を出してC7に落ち着く大胆なリハモ。
これもメロディーの邪魔をしなければ自由にリハモできる好例です。
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