ジャズの歴史において多くの名曲が生まれましたが、その中でも有名な曲のひとつが、Ray Noble作曲のCherokeeです。
「インディアン・スイート」という組曲の第1曲で、副題は「インディアン・ラブ・ソング」。
この曲は、Aセクションのシンプルなハーモニーと、Bセクションの4小節ごとの転調が特徴で、演奏者にとっては技術とセンスを試される曲として知られています。
ここでは1938年から1955年までの名演からコード進行を書き出し、各アーティストがどのようなアレンジをしているか探っていきます。
Ray Noble 1938年
作曲者Ray Nobleのバージョン。ジャムセッションで使うコード進行とほとんど同じなことからも、完成度の高さが伺えます。
Count Basie Orchestra 1939年2月
Ray Nobleのアレンジを忠実に再現しているのがこのバージョン。KeyはAメジャーになっていますが、イントロ、テーマのコード進行も同じになっています。
Charlie Barnet 1939年7月
イントロと転調後のキーが変わっていますが、テーマのコード進行は原曲と同じ。裏メロが追加されているのが特徴です。
Charlie Parker 1941-42
※正確な録音日が不明なので1941-42表記にしています。
チャーリー・パーカーの演奏ではめずらしいドラム、ギターとのトリオ演奏。ギターのバッキングをもとにコードネームをつけましたが、、原曲と比べてかなりシンプルになっています。
チャーリー・パーカーのフレージングは、原曲のコード進行に沿っている部分が多く、そのコントラストが面白いです。
Bud Powell 1949年
イントロはパワーコードを使ったリフ。テーマでは[A]3〜6小節目と9小節目のリハモがとても斬新に響きます。
テーマのコードネムはピアノのボイシングをもとにしていますが、ベースラインはリハモに合わせず、ソロセクションのコード進行を弾いています。
なので、厳密にはリハモではなくハーモニーを重ねるスーパーインポーズという手法です。
Sonny Stitt 1950年
このバージョンは、サックス、ピアノ、ベースのトリオ編成で、それぞれが原曲のコード進行を基に自由に演奏しています。この3つのハーモニーが絶妙に重なり合ってできるのがビバップの魅力です。
ここではピアニストの演奏をもとにコードネームを記譜しています。
Wynton Kelly 1951年
ウィントンの特徴的なアレンジが後テーマを[B]始まりにしていること。ソロ終わりの盛り上がりを残したまま後テーマに入るドラマチックな展開です。
I-VII-VIからII-Vで半音アプローチするエンディングは個人的に大好きなパターン。
Tal Farlow 1954年
テンポ380という驚異的な速さで演奏するCherokee。タル・ファーロウのテクニックとフレージングが満喫できます。
このアルバムが発売された後、ギタリスト達はこぞって速さを競い合った、のかも。
Clifford Brown 1955年2月
Bbmをペダルにしたイントロが特徴的。コード進行は原曲をシンプルにしたもので、一般的によく知られているものになっています。Cherokeeを最初に学ぶならこのバージョンがおすすめです。
Sarah Vaughan 1955年10月
ジャズのメロディーとハーモニーの妙を感じることができる名演。
I-VI-II-Vを使ったイントロからはじまり、原曲と同じコード進行で展開します。ソロ終わりはウィントン・ケリーと同じく[B]戻りです。
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