ジャズギタリストなら1度は弾いたことのあるオルタードスケールを使ったリック。
簡単に弾けるので、ジャズを始めたころは重宝するリックです。
しかしV7-Im7ではいつもこのリックを使ってしまう状態になりがちです。
そこでここでは、リックを仕組みから理解して、オルタードリックを活かしながらアレンジしていく方法を紹介します。
アレンジの方法を覚えれば、1つのリックから何十ものリックに変化させることができます。
いつも同じリックを使ってしまう演奏から抜け出すためにも、ぜひアレンジ方法を覚えて、自分だけのリックを作り出してみてください。
G7-Cm7で使えるリック
G7でGオルタードスケールを使ったリックです。
Gオルタードスケール
Gオルタードスケールのポジション
使えるスケールが分かればアレンジできそうですが、オルタードスケールから適当に音を選ぶだけでは、なかなかカッコいいアレンジにたどり着けません。
より効率的にアレンジするためにはもう一歩進んだ分析が必要です。
リックの作り方と会話の関係
突然ですが、誰かと会話するときを想像してみてください。
何か話したいことや伝えたいことがあって、それを相手に分かってもらえるように工夫して話しませんか。
実はリックもこれと全く同じ方法で作ります。
リックにも伝えたい音があり、それを装飾していくことでカッコいいリックになっているのです。
つまり、リックを分析するときはスケールだけでなく、伝えたい音と装飾している音も分析することが大切です。
このサイトでは伝えたい音をターゲットノート、装飾している音をアプローチノートとしています。
G7-Cm7リックのターゲットノート
ターゲットノートは4分の4拍子では1拍目と3拍目に置かれる音です。
それ以外の音はアプローチノートになります、
G7-Cm7リックのターゲットノートを見てみましょう。
G7-Cm7リックのターゲットノート
G7ではオルタードテンションの#9th、#5th。Cm7ではコードトーンの5thになっています。
これを踏まえた上でアプローチノートを見てみましょう。
G7-Cm7リックのアプローチノート
G7の#5thへオルタードスケールの下降。Cm7の5thも同様にオルタードスケールの下降でアプローチしています。
このことから、各ターゲットノートに対してオルタードスケールの下降を使ったリックと分析することができます。
ターゲットノートとアプローチノートに分けることで、簡単にアレンジすることができるようになります。
G7-Cm7リックのアレンジ
アレンジには2つの方法があります。
1つはアプローチノートを変える方法。もう1つはターゲットノートを変える方法です。
まずはアプローチノートを変えてみましょう。
もとのリックはオルタードスケールの下降なので、上昇に変えてみます。
スケールのアプローチを上昇に変えた例
ターゲットノートを変えないアレンジは、アプローチノートを覚えるのにも役立ちます。
スケールアプローチの仕組み
スケールアプローチはさらに分解すると、アルペジオのアプローチにネイバートーンとパッシングトーンを加えたものになります。
アルペジオを使ったアプローチ
各ターゲットノートに3度音程の単音アルペジオでアプローチしています。
ネイバートーンとパッシングトーンを加えたアプローチ
上からのネイバートーンはアッパーネイバートーン(UNT)と呼びます。
スケールアプローチが、アルペジオにネイバートーンとパッシングトーンを加えたものと分かると、アレンジの幅が広がります。
ネイバートーンをアレンジ
ネイバートーンには下からのローワーネイバートーン(LNT)とクロマチックネイバートーン(CNT)があります。
それぞれにアレンジしてみましょう。
ローワーネイバートーン
上からのネイバートーンを下からのネイバートーンにアレンジしています。
クロマチックネイバートーン
Gオルタードスケール内に無い音でアプローチする場合はクロマチック音として表記しています。
アルペジオアレンジ
アルペジオを使ったアプローチはスケールのアプローチの次によく使われる手法です。
GオルダードスケールではDbトライアド、Ebトライアド、Abmトライアドなどさまざまなトライアドが使えますが、
ここではGトライアドとディミニッシュを使ったアレンジを紹介します。
GトライアドとFdimのアルペジオ
Gトライアドの上昇とFdimのb5thからの下降です。
GトライアドとDdimのアルペジオ
Gトライアドの上昇とDdimの上昇にアレンジ。
オクターブディスプレイスメント
アルペジオアプローチが低音弦になってしまう場合はオクターブ上げるのもおすすめのアレンジです。
もとのリックのオクターブを上げ下げする手法をオクターブディスプレイスメント(OCT)と呼びます。
G7のアルペジオ
トライアドではなく4和音を使うこともできます。
ここではG7のルート-3rd-b7thの上昇アルペジオと3rd-ルート-b7thの下降アルペジオを使っています。
チェンジングトーンを使ったアレンジ
クロマチックを含んだジャズらしいアプローチ法がチェンジングトーンです。
チェンジングトーンを使ったアレンジ1
G7のb13thへは下上ではさむチェンジングトーン。Cm7の5thへは上下ではさむチェンジングトーンです。
チェンジングトーンを使ったアレンジ2
G7のb13thへのチェンジングトーンを上下にしています。
エスケープトーンとアポジャトゥーラ
エスケープトーンはターゲットノートとは逆方向へ進む音を使ったアプローチです。
エスケープトーンを使ったアレンジ
アポジャトゥーラはターゲットノートより低い音からアプローチします。
アポジャトゥーラを使ったアレンジ
オルタードスケールに無い音でアプローチすることもできます。
アポジャトゥーラを使った半音アレンジ
ターゲットノートをアレンジ
アプローチ法は変えずにターゲットノートをアレンジしてみましょう。
ターゲットノートのアレンジ1
ターゲットノートにはどんな音でも使えます。
ここではコードトーンを選んで安定した響きにしています。
アプローチノートを加えて完成させたリック1
元のリックと同じように、オルタードスケールの下降でアプローチしています。
ターゲットノートのアレンジ2
G7の3拍目にオルタードテンションの#9thを選んでいます。
オルタードテンションは緊張感を演出してくれる音です。
アプローチノートを加えて完成させたリック2
ターゲットノートのアレンジ3
G7のターゲットノートにオルタードテンションを選んでいます。
アプローチノートを加えて完成させたリック3
ターゲットノートのアレンジ4
G7の3拍目にオルタードテンションのb13thを選んでいます。
またCm7のターゲットノートにテンションの9thを選びました。
テンション音は洗練さを演出することができます。
アプローチノートを加えて完成させたリック4
アプローチノートをアレンジしたリックまとめ音源
ここではアプローチノートをアレンジして作ったリック13種をまとめて弾いています。
カッコいいと思ったリックがあったら、どんなアプローチノートを使っているか覚えてみてください。
ターゲットノートをアレンジしたリックまとめ音源
ターゲットノートをアレンジした4種のリックをまとめて弾いています。
ターゲットノートを弾く練習はアドリブの基礎練習にもなります。
新しい曲やコード進行でアドリブ練習するときは、ターゲットノートから弾く練習を取り入れてみてください。
リックをアレンジする方法まとめ
リックをアレンジするときは、ターゲットノートとアプローチノートに分け、それぞれをアレンジしていくのがおすすめです。
ただし、アレンジしたリックは全てがカッコいいとは限りません。
アレンジした中からカッコいいと思えるリックに厳選して覚えましょう。
また、なぜカッコよく聴こえるのか(ターゲットノートの響きがカッコいいのか、アプローチの方法がカッコいいのかなど)を自分なりに理解しておくことも大切です。
今までコピーしてきたリックやこれから覚えるリックを分析して、アレンジまでしてみてください。
リックを覚える楽しさがさらに広がっていくはずです。
ここで紹介しているリックの分析とアレンジ法が教則本になりました。
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