マイナーキーの曲を演奏する上で欠かせないのがハーモニックマイナースケール。
構成音はC-D-Eb-F-G-Ab-B。1音半の音程差(Ab-B)がある独特なサウンドで、ジャズでも重宝するスケールです。
ここではそのサウンドと指板上の配置を覚える方法を紹介していきます。
ハーモニックマイナースケールのサウンド
スケールを覚えるときに大切なことは、そのスケールの響きを耳で覚えることです。まずはハーモニックマイナースケールの響きを耳で感じてみてください。
Cハーモニックマイナースケールの構成音とサウンド
ハーモニックマイナースケールはAbからBの1音半の音程に特徴があります。この独特な響きを感じ取れるまで聴いてみてください。
ハーモニックマイナースケールの成り立ち
なぜハーモニックマイナースケールが「ナチュラルマイナースケールの7番めの音を半音上げたスケール」として広まっているのか、その理由を簡単に紹介します。
ナチュラルマイナースケールのVコード
ナチュラルマイナースケールは1-2-b3-4-5-b6-b7の7音スケールです(詳しくはナチュラルマイナースケールを効率的に覚える3つの方法で紹介しています)。
Cナチュラルマイナースケール
出来上がるコードをみてみましょう。
Cナチュラルマイナースケールからできるコード
5番目(V)のコードをみるとGm7になっています。本来Vコードはドミナントの7thコードであるはずですが、ここではマイナーになっています。
Vコードがm7のままだと、ジャズ演奏家が大好きなV7-Iという進行が使えません。ならばGm7をG7に変えてしまおう、というのが次の譜例。
Gm7をG7に変更
Gm7をG7に変えるために3度の音(Bb音)を半音上げてB音にしています。このB音はナチュラルマイナースケールの7番目の音を半音上げたもの。これがハーモニックマイナースケールを「ナチュラルマイナースケールの7番目の音を半音上げたスケール」と呼ぶ理由です。
Cハーモニックマイナースケール
音を積み上げると以下のようなコードができます。
Cハーモニックマイナースケールからできるコード
ジャズスタンダードのマイナーキーの曲はVm7ではなくV7になっていることがほとんど。つまりハーモニックマイナースケールが使われているのです。
ダイアトニックスケールとして考える
ハーモニックマイナースケールをダイアトニックスケールとして捉えることもできます。その場合、全音+半音+全音のテトラコルドと半音+1音半+半音のテトラコルドを組み合わせます(詳しくはダイアトニックスケールの成り立ちと捉え方へ)。
Cテトラコルド(全音+半音+全音)
Gテトラコルド(半音+1音半+半音)
Cハーモニックマイナースケール
度数表記
ルートを基準に度数で覚えることでアドリブにも活かすことができます。現在はこの考え方が一般的です。
Cハーモニックマイナースケール度数表記
また各音をコードトーン+テンションに分けて覚えておくことも大切です。
このようにコードトーンとテンションに分けることで、コードに対してどんな響きのするスケールなのかを覚えることができます。
スケール=コードトーン+テンションという考え方はアドリブでも重要になってくるのでぜひ覚えておいてください。
各マイナーコード上でのサウンド
Cハーモニックマイナースケールはマイナーコード上で使うことができます。同じフレーズがバックのコードの違いによっとどう変わるか聴いてみてください。
CmMa7コード上でのサウンド
Cm7コード上でのサウンド
CハーモニックマイナースケールをCm7コード上で使うと、コードのBb音とスケールのB音がぶつかります。はじめは違和感があるかもしれませんが、ジャズではよく使われるので響きを覚えておいてください。
各ポジションとコードを関連させる
指板上のスケールの配置を覚えるときは、いくつかのポジションに分け、それぞれのポジションごとに覚えていくのが効率的です。またその際に目印となるコードフォーム、コードトーンも関連させて覚えておきましょう。
Cハーモニックマイナースケールを例にそれぞれのポジションを紹介します。実際に弾きながら確認してみてください。
ポジション1 スケール、コードトーン、コードフォーム
ポジション2 スケール、コードトーン、コードフォーム
ポジション3 スケール、コードトーン、コードフォーム
ポジション4 スケール、コードトーン、コードフォーム
ポジション5 スケール、コードトーン、コードフォーム
スケールをコードトーン、コードフォームを関連させることで、各音の響きをしっかり覚えることができます。ここではCmMa7を例にしましたが、Cmトライアド、Cm7、Cm9など、さまざまなコードとも関連させてみてください。
ランダムに弾く
ある程度音の配置が見えてきたらランダムに弾いてみましょう。ここではポジション3での例を紹介します。
ポジション3をランダムに弾く
ポジション内の音の配置を正確に覚えられているかの確認に最適な練習法です。8分音符を使っていますが4分音符でもかまいません。コードに対して何度の音を弾いているかも意識しながら弾くのも効果的です。
リズムに変化をつける
ランダムに弾くのに慣れてきたら、リズムを変えてみましょう。16分音符、3連符、休符などを混ぜて自由に弾いてみてください。ここでは16分音符中心の例を紹介します。
ジャズのアドリブはリズムに音を当てはめています。まずはカッコいいと思えるリズムをいくつか覚え、そこに音を当てはめてみてください。
モチーフを発展させる
最後はモチーフを発展させる練習です。これはアドリブの基礎にもなります。ここではシンプルな5音モチーフを発展させてみましょう。
モチーフは少ない音数の方が発展させやすいので、5音以内がおすすめです。
ここまでできるようになれば、スケールの響きとネック上の音の配置がしっかり見えているはずです。それぞれのポジションを覚えたら指板全体を使って同じように練習してみてください。
ハーモニックマイナースケールのポジションPDF
指板上を5つのポジションに分けた、全キーのハーモニックマイナースケール度数表記をPDFにしました。練習のお供にご活用ください。
響きから覚えるスケール練習が教則本になりました
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