David Oakesのサイトで公開されているJimmy Wybleのエチュード。
ここではエチュード1をタブ譜付きギタースコアにしました。
Jimmy流のソロギターのアイデアや、コンピング、アドリブにも応用できるフレーズが学べます。
どの小節も高難度ですが、ぜひ挑戦してみてください。
エチュード1の音源と楽譜
David Oakesの音源では12小節目2拍目をアレンジして次のように弾いています。
以下はDavid Oakesから使用許諾をもらい、Etude 1 Synopsis(2008年著)を和訳したものです。Davidの音源と合わせて参考にしてみてください。
エチュード1について
Jimmy Wybleが1973年に出版した”Classic Country”(ほとんど世に知られることなく絶版になってしまった本)に掲載されています。
この13小節は、これまで弾いてきたどんな曲よりも挑戦しがいのあるものになっているはずです。
Jimmyは、生徒たちがこのエチュードを学んだ上で、どんな曲を書くのか、どのように自分の演奏に活用していくのかに関心がありました。そのため必ずこのエチュードを教えていました。
時代を先取りしすぎていた
“Classic Country”が発売された当時、原稿をChet Atkinsに送りましたが、Chetは「これは難しすぎる。誰も弾けないよ」と書いたメモと一緒に送り返してきました。
これが今から40年前のことです。
興味深いのは、この40年の間にギタリストたちが進化したことです。Chetが言っていた「難しすぎて弾けない」ということがなくなったのです。
新しいサウンドや演奏方法を絶えず探しながらアドリブするギタリストにとって、Jimmyのエチュードはもはや弾けない音などではなく、とても興味深い音に聴こえるのです。
つまり”Classic Country”は40年も時代を先取りしていたのです!
10度音程を学ぶ
私はエチュード1にどんな意図があるのかJimmyに聞いたことがあります。その答えはとてもシンプルでした。
「このエチュードはルートとオクターブ上の3度でできる10度音程を学ぶためのものだ。ほとんどのコードで6弦(ルート)と3弦(10度)を使った10度音程が出てくる。このフォームを基準にして内声を作っていったんだ。そのため、各小節の終わりにはよくあるジャズギターのコードフォームがでてくる。」
練習する上で重要な3つのポイント
- 右手のピッキング
- 親指と人差し指は常にオルタネイト(交互)で弾きます。
- 左手の運指
- バレー(セーハ)するフォームは出てきません。また各音をできるだけ鳴らし続けます。ピアノのサスティンペダルを踏んでいるイメージをしてみてください。音を鳴らし続けることはコードの響きを感じるのにも役立ちます。
- テンポ(BPM=144)
- 私はレッスンでこのエチュードを使っていますが、ロサンゼルスでトップクラスのクラシックギタリストやジャズギタリストでさえも、この速さで弾くのは簡単ではありませんでした。
まずはゆっくりなテンポからからはじめてフィンガリングが安定するまで練習してみてください。
健闘を祈ります!
1小節目のアイデア
エチュードのはじまりは美しいオーグメントコードのアルペジオです。”Classic Country”の中ではさまざまなバリエーションがでてきます。
この小節を見ると、オーグメントトライアドのフォームからどの2音を選んでいるかがよくわかります。これがJimmy流の対位法の作り方です。
Caugトライアドダイアグラム
練習例1
オーグメントトライアドを使ったアイデアはネック上を上昇していく練習に最適です。Jimmyがやっているのをよく目撃しました。彼はネック上を完全に把握していて、どんなアイデアでもアドリブで自由自在に弾いていました。
2弦1フレットをルートとするとC7altの響き、6弦2フレットをルートにするとGb9(#11)の響きになります。
Black Orpheusに応用した例
ソロギターのイントロアイデアに応用した例です。この演奏を聴いたギタリスト達はみんな「どうやって弾いているんだ?」と振り返ります。
4、5小節目のアイデア
マイナーII-Vで使える美しいラインです。BluesetteやStella by Starlightの最後8小節で使うことができます。
4分の4拍子でも使えるように、リズムを変化(8分を4分音符に)させてみてください。またボサノヴァのフィールでも弾いてみてください。
私の録音はAlone Togetherの[B]セクションのコード進行を使ってアドリブしたものです。Jimmyのラインはメロディを連想できます。後半の4小節はコード進行に合わせて全音下げています。FMa7ではエチュード1の3小節目と同じものを弾いています。
原曲の拍子は4分の4拍子ですが、ここでは4分の3拍子で弾いていることに注意してください。またスライドやハンマリングも追加しています。
6小節目のアイデア
私のお気に入りリックの1つです。6弦3フレットと3弦4フレットの10度音程からはじまり、Db(G)ホールトーンスケールで上昇してきます。
音源では4分の4拍子で使えるにように2音加えています。さらにDm7のよくあるフレーズと合わせ、G/CまたはCMa9に解決するII-V-Iフレーズにしています。
Black Orpheusのコード進行で使った例
Black Orpheusのメロディが感じられる演奏になっていることに注目してください。13小節目のFMa7はエチュード1の2小節目を使っています。他の箇所ではEtude1で出てきていないJimmyのアイデアも使っています。
7小節目のアイデア
ギタリストにお馴染みの5弦ルートのC7(#9)コードをもとにしたアイデアです。
3弦3フレットを押さえた薬指は離さずにして弾きます。このアイデアを半音ずつ上げたのが次の譜例です。
Black Orpheusのコード進行を使ったソロギターのアイデア
7小節目のアイデアは2段目2小節目のE7(b9)で使っています。E7(b9)と記譜していますが、#9も含まれ、Am7のルートに解決する美しい響きになっています。
終わりに
私は、テクニックやハーモニー分析、フレーズの移調などでこのエチュードを学んできました。
そして、これらのアイデアを自分の演奏で使えないか模索し、いまでは自分の言葉としてアドリブに活かすことができています。
エチュード1は短いですが、これまでみてきたように、各小節は現在のコードメロディにも活用できるアイデアが満載です。
ここで紹介した練習方法を活用して、ぜひあなたの演奏にも取り入れてみてください。
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