リックはジャズのアドリブに欠かせないものです。しかし自由に使えるまでには2つの大きな壁があります。
- たくさん覚えてもすぐに忘れてしまう
- リックをつなげるだけの演奏になってしまう
これを解決するのがリックを分析することです。
リックを分析できるようになると、覚える効率が上がり、リックを作り出せるようになります。
ここで紹介する分析法を覚えて、今まで使ってきたリックを分析してみてください。リックをより深く理解することで、アドリブがより楽しくなってくるはずです。
リックを分析してみよう
メジャーキーのII-V-Iリックを例にします。
II-V-Iリック1
リックを覚えるとき、何をしていますか?
何回も弾いて指に覚えこませることもできますが、それだけではアドリブするときに手癖としてただ使うだけになってしまいます。
せっかく覚えたリックを自分の演奏に活かすためにも、分析してより深く理解することが大切です。
リックの分析はターゲットノートから
リックの分析は簡単です。
伝えたい音(ターゲットノート)を抜き出すだけ。ターゲットノートは強拍(1、3拍目の音)です。
II-V-Iリック1のターゲットノート
ターゲットノート以外の音は、ターゲットノートを装飾する音=アプローチノートです。
アプローチノートにはさまざまな種類があり、リックはこのアプローチノートの使い方を覚えるためのものでもあります。
ジャズで使うアプローチノートは種類が多いので別ページで紹介しています。
ここからはアプローチノートの用語が出てきますが、ひとまず「こういうアプローチノートがあるんだ」という感覚で読み進めてみてください。
II-V-Iリック1のアプローチノート
- Dm7の5th=ドリアンスケール
- G7の5th=チェンジングトーンとアンティシペーション
- G7の3rd=ネイバートーンとエスケープトーン
- CMa7の3rd=ミクソリディアンb9スケール
このように、リックはターゲットノートにアプローチノートを加えることで作られています。
リックのアレンジ
リックがターゲットノートとアプローチノートで出来ていることさえ分かれば、リックのアレンジも簡単です。
例えば、アンティシペーションを使わないリックにアレンジする場合は、クロマチックパッシングトーン(CPT)とネイバートーンを加えます(NT)。
アンティシペーションを使わないアレンジ
リックをコピーする本来の意味は、ターゲットノートの響きとアプローチノートの使い方を覚えるためです。つまり、リックをコピーすることはジャズらしい音使いを覚えるための最高のイヤートレーニングなのです。
ターゲットノートからリックを作ってみよう
リックが分析できるようになったら作ってみましょう。作り方は簡単です。まずはターゲットノートを選び、そこにアプローチノートを加えていきます。ターゲットノートはどんな音を使っても構いませんが、コードトーンや9thから選ぶのが王道です。
ターゲットノート
ターゲットノートが決まったら自由にアプローチノートを加えていきましょう。
アプローチノート
ここでは以下のアプローチノートを選んでいます。
- Dm7の9th=Dmトライアド
- G7の3rd=Dm7のアルペジオの転回型(R-5-b7)
- G7のb7th=リディアンb7スケール
- CMa7の5th=スケール音+チェンジングトーン
完成したリックにフィンガリングテクニックを加えて弾いてみましょう。
オリジナルのリック
ターゲットノートにコードトーンを選ぶと安定した音になり、テンションを使うと洗練された音になります。V7コード上ではオルタードテンションを使うことで緊張感のある音にすることもできます。まずはコードトーンの響きを確実に覚えてからテンションやオルタードテンションを使ってみてください。
5つのコード進行
ジャズスタンダードにはさまざまなコード進行が出てきますが、その中でよく出てくるのが次の5つのコード進行です。このコード進行でのリックを分析することで、ターゲットノートとアプローチノートへの理解が深まり、他のコード進行でもリックが作れるようになります。
1小節ずつのメジャーII-V-I
1小節ずつのマイナーII-V-I
1小節のメジャーII-V-I
1小節のマイナーII-V-I
I-VI-II-V
何のリックを分析するか迷ったら、上記5つのコード進行からはじめてみてください。
複雑なコード進行でのリックの作り方
5つのコード進行以外のコード進行でリックを作ることは、ターゲットノートとアプローチノートの使い方が身についているかを調べるのにも役立ちます。ここではジョン・コルトレーン作曲のCountdownを例にリックを作ってみましょう。
どんなに複雑なコード進行でも作り方は変わりません。
ターゲットノート
テンションはF7の9thのみで、他はコードトーン。特にルートを多く使ってみました。ここにアプローチノートを加えていきます。
アプローチノート
- F7の9th=チェンジングトーン
- BbMa7のR=Fミクソリディアンスケール
- Db7のR=チェンジングトーン
- GbMa7のR=スケール音とチェンジングトーン
- A7の3rd=スケールとクロマチックパッシングトーン
- DMa7の3rd=Aミクソリディアンb9スケール
- DMa7のR=Aトライアドの転回型(3-R-5)
完成したリックにフィンガリングテクニックを加えて弾いてみましょう。
完成したリック
ターゲットノートの響きとアプローチノートの使い方さえ覚えてしまえば、どんなに複雑なコード進行でもリックを作り出すことができます。
はじめのうちはターゲットノートとアプローチノートを別々に考えて作りますが、慣れてくるとどちらも瞬時に作り出せるようになります。そしてそれがアドリブになるのです。
リックを活用するための5ステップ
- リックをコピーして弾けるようになる(ギターの基礎テクニックの習得)
- コード進行に合わせて弾けるようになる(リズム感の習得)
- アドリブ中に自然に使えるようになる(ジャズらしい音使いの習得)
- リックをアレンジできるようになる(アドリブの基礎)
- リックを自分で作り出せるようになる(アドリブの完成)
リックは自分を表現する大切な言葉です。これは絶対弾けるようになりたい!と思えるリックに厳選して分析していくことが大切です。
そして自分だけのリックを今日から作ってみてください。自分にしか出せない音でのアドリブは、ジャズの楽しさをさらに増やしてくれるはずです!
リックの分析と作り方が教則本になりました
この記事へのコメント