ピアニスト、Lars Janssonの演奏からAマイナーキーのII-V-Iリックを紹介します。
リックはコピーして使うだけで終わらず、分析して自分なりのリックを作り出せるようにすることが大切です。
ここではターゲットノートとアプローチノートに分け、アプローチノートを変化させてオリジナルのリックを作る方法から、コピーしたリックをそのまま使う実例までを紹介します。
Aマイナーキーでの実例
コンピング
リックをコピーするときはコンピングもコピーしておくとリックとコンピングを同時に学べるのでおすすめです。
ターゲットノート
1、2小節目のアタマはアンティシペーションする前の状態で分析していきます。
ターゲットノートが、各コードの何度の音か、またどんな印象の響きに感じるか、をしっかり覚えておくことが大切です。
大きく分けると、コードトーンは安定した音、テンションは洗練された音、オルタードテンションは緊張感のある音になります。
各音に対する感じ方は人それぞれ違うので、自分にとってどう感じるかを大切に響きを覚えてみてください。
アプローチノートの分析
ターゲットノートに対してどんなアプローチノートを使っているかみていきましょう。
Bm7(b5)の11th=ネイバートーン
Bm7(b5)のb13th=エスケープトーン
E7のb9th=クロマチックパッシングトーン
E7の#9th=Fマイナートライアド
Am7のb3rd=Aナチュラルマイナースケール
E7でFマイナートライアドを使っているのが特徴的です。
FマイナートライアドはE7に対してb9th、3rd、b13thになります。
アンティシペーションを加える
アプローチノートを加えた状態からアンティシペーションを使うことで完成型のリックになります。
Bm7(b5)の11th、E7のb9thを半拍アンティシペーションさせています。
リックはターゲットノート+アプローチノート+リズムアレンジで出来上がっているのを覚えておくとアレンジも簡単になります。
Bm7(b5)のアレンジ
ターゲットノートは変えずアプローチノートを変えてみましょう。ターゲットノートを変えないことで、コピーしたリックを活かしたままアレンジすることができます。
クロマチックパッシングトーンを使ったアレンジ
アポジャトゥーラを使ったアレンジ
他のアプローチノートも試して、カッコいいと思える響きを探してみてください。
E7のアレンジ
Fマイナートライアドのアプローチを活かしたまま、音の順番を変えたアレンジをしてみましょう。
Fマイナートライアドの転回型を使ったアレンジ
Fマイナートライアドの転回型と1オクターブ上げたアレンジ
オクターブを変えるアレンジはオクターブディスプレイスメントと呼ばれる手法です。
オリジナルのリック
Bm7(b5)とE7のアレンジを組み合わせれば、コピーしたリックを活かしたオリジナルのリックが完成します。
アプローチノートのアレンジに慣れてきたらリズムをアレンジしてみましょう。
リズムアレンジ
まずはアンティシペーションを使わないリックを作ってみます。
8分のリックにアレンジ
ネイバートーンを使って8分のリックにしています。
ディレイドアタック
Am7のターゲットノートを1拍目より後にすることをディレイドアタックと呼びます。ここではクロマチックパッシングトーンを使ってディレイドアタックさせてみましょう。
タグノート
Am7のターゲットノートの後ろに追加する1音~3音のことをタグノートと呼びます。
1音のタグノート
3音のタグノート
オーグメンテーション
音価を伸ばす手法をオーグメンテーションと呼びます。ここではE7のリックをII-Vにオーグメンテーションしています。
ディミニューション
音価を縮める手法をディミニューションと呼びます。ここでは8分を3連符にしています。
オーグメンテーションもディミニューションも、どの音に対して使うかは自由です。1音だけに使ってもかまいません。いろいろなリズムを試してみてください。
メジャーキーのII-V-Iで使う
マイナーキーのII-V-Iリックは平行調のメジャーキーで使うこともできます。
ターゲットノート
リックによってはターゲットノートが不協和になる場合もあります。その場合はターゲットノートを変えてリックをアレンジするか、マイナーII-V-I専用として覚えるのがおすすめです。
実践で使ってみよう
コピーしたリックをスタンダードのコード進行に合わせて使えるようにしておくことも大切です。
おすすめは4~8小節間をループさせて練習する方法です。まずはコードトーン中心にアドリブし、そこからリックに上手くつなげていきます。
曲に合わせてリックのキーを変えることも覚えるのに役立ちます。
ここではUpper Manhattan Medical Groupのコード進行を使って練習してみましょう。Fm7(b5)-Bb7-Ebm7に転調させて使っています。
UMMGでの演奏例1
UMMGでの演奏例2
ここではコピーしたリックをそのまま使っていますが、アレンジしたリックを使っても構いません。
リックを分析する→アレンジする→オリジナルのリックを作る→実践で使う、を繰り返して練習してみてください。
このリックが学べるCD
ピアニストLars Jassonのアルバム。4曲目の酒バラからのリックです。
この記事へのコメント