ジャズのアドリブをしたいけれど、何から始めていいのか分からず悩んでいませんか。
アドリブをするために大切なことは仕組みを知ることです。仕組みを理解すると自分に足りないものが分かり、何を練習すれば良いのかが見えてきます。
そして最終的に、自分だけのアドリブ法を作れるようになります。jazzguitarstyle.comがおすすめする方法は次の5ステップです。
- ジャズの響きに慣れるためのイヤートレーニング
- ターゲットノートとアプローチノートの響きを覚える
- アドリブの基礎を作る
- アイデアを学ぶ
- アドリブの完成
まずはアドリブを体感しつつ、仕組みと練習法を理解していきましょう。
アドリブを体感してみよう
次の音源を再生しながら何か歌ってみてください。「ああ~」でも「ララ~」でも、なんでも構いません。
何か歌えましたか?
それがアドリブです。
カラオケに合わせて、その瞬間に自分が思った音を歌う。つまりアドリブとは、思いついた音を瞬時に歌うことです。
ではジャズのアドリブ練習の目的はなんでしょうか。それは、瞬時にジャズらしい音を思い浮かべ、それをカッコよくギターで弾くことです。
好きなギタリストを見つけよう
ジャズらしい音を思いつけるようにする方法は、まだ喋れない子供が言葉を覚えていく方法と同じです。
子供は親が教えてくれる短い単語を耳から覚え、使いながら身に付けていきます。
ジャズも同様で、音源を聴いて短いフレーズ(リック)を耳から覚え、使いながら身に付けていきます。
そのためにも、まずはこんな風に弾きたい!と思えるギタリストを見つけることです。最近ではYouTubeにライブやレッスンが多数公開されているので、お気に入りの動画を見つけるのが近道です。
おすすめのギタリストを以下のページで紹介しているので参考にしてみてください。
好きなギタリストを見つけたら、アドリブパートも鼻歌で歌えるくらい聴き込んでみてください。いつも口ずさんでしまうぐらい覚えることが、ジャズらしい音使いを思いつくための近道になります。
アドリブはメロディをくずしたもの
鼻歌を歌っていて、カッコいいフレーズを思いついたらどうしますか?
録音して残しておきたい! みんなに聴いてもらいたい! と思いませんか?
そうして出来上がるのがメロディです。
ジャズのアドリブはこのメロディを崩す(フェイクする)ことから始まっています。つまり、メロディの仕組みを理解すればアドリブの土台が作れるようになるのです。
メロディの分析に欠かせない拍の役割
拍には大切な役割があります。4分の4拍子の各拍の役割は次の2つです。
1、3拍目は安心感、安定感を与える。
2、4拍目とウラ拍は動き、躍動感を与える。
音源で各拍を聴いてみてください。
1、3拍目だけ弾いたベースライン
2、4拍目だけ弾いたベースライン
安心感、安定感のある1、3拍目に音を鳴らすと、その音を聴いている人に印象づけることができます。2、4拍目の音は1、3拍目の引き立て役になります。
それでは拍の役割を意識しながらメロディの作り方をみていきましょう。
メロディの仕組み
Stella By Starlightの1~8小節のメロディを例にどのように作られているか分析してみましょう。
Stella By Starlightの1~8小節のメロディ
メロディには核となる伝えたい音があり、それを装飾して作り上げています。伝えたい音は聴いている人の印象に残すため1、3拍目に鳴らします。
まずは1、3拍目の音を抜き出しましょう。
Stella By Starlightの1、3拍目の音
伝えたい音はそれだけを弾いてもメロディになっているのが特徴です。
この「伝えたい音」の呼び方には、ガイドメロディ、ターゲットトーン、ターゲットノートなどがありますが、jazzguitarstyle.comではターゲットノートとして紹介していきます。
メロディには必ずターゲットノートがあり、その音をより印象付けるためにさまざまな装飾音(アプローチノート)があります。
Stella By Starlightのアプローチノート
半音上や下、3度以上の音程差、先取りするなど、さまざまなアプローチノートを使ってターゲットノートを表情豊かにしています。
つまりメロディはターゲットノートにアプローチノートを加えることで出来上がっているのです。
アドリブはメロディを装飾したもの。そのメロディはターゲットノートを装飾したものです。アドリブするためにはこのターゲットノートとアプローチノートの使い方を覚えることが大切です。
アプローチノートの詳しい説明はスケールをもとにしたアプローチノートの仕組みと使い方で紹介しているので合わせて参考にしてください。
アドリブの最小単位「リック」の大切さ
日常会話を思い浮かべてみてください。
誰かに話をするときは何かしら伝えたいことがあり、それを相手に上手く伝えられるように、自分の中に蓄えられている無数の言葉の中から選んで話します。
ジャズのアドリブも同じです。
伝えたいこと=ターゲットノートがまずあり、それをより魅力的な音にするため自分の中にあるアプローチノートを選んで弾いていきます。
このターゲットノートとアプローチノートの使い方を簡単に学べるのがリックなのです。
リックは会話でいう定型文やフレーズのこと。リックをコピーすることで耳が新しい響きを覚え、コピーしたリックを弾くことでテクニックが身につきます。
さらにリック分析してアプローチノートの使い方を覚えることで、リックを作り出せるようにもなります。
リックを学ぶことは最高のイヤートレーニングになると同時に、演奏力の向上と表現の幅の拡大にもなります。
アドリブ習得におすすめの5つのステップ
ここまでをまとめたのが次の5ステップです。
- 好きなギタリストの演奏をひたすら聴く
- スタンダード曲のメロディを弾く
- 様々なコード進行上でターゲットノートとアプローチノートを弾く
- リックをコピーして表現の幅を広げる
- 実践する
2、3、5のステップを練習するときは録音してみてください。自分の演奏を客観的に聴くと何が足りないのかが分かるようになってきます。
この5ステップを繰り返し行うことで「アドリブをしたいけれど、何から始めていいのか分からない」という悩みが解決されるはずです。
この記事へのコメント
大事なライブや作品のレコーディングで演奏曲があらかじめ決まっている場合、アドリブは事前に流れやフレーズ的なものをある程度想定や予習をしておきますか?状況次第でしょうけども、平均的に全体のどの程度の割合で仕込むのでしょうか。
また、逆に、その場の歌心と手癖に頼って文字通りの即興に挑むのはどの程度の割合なのでしょうか?
ちなみに僕はセッションでは仕込はなく即興でその為にグダグダになることが多いですが、ライブでは「納得のいくアドリブをしたい」という理由で九割は事前に仕込んでいます。経験を積めばその割合は低くなるのかなと思いますが、実際はどうなんでしょうか?
人によっては下手でもいいから即興で出てきたものを最善と考えてそこを追求している人も仲間にはいますが。
質問ばかりで恐縮ですが、アドリブに対する価値観や準備についてプロの方がどういうふうに考えているか参考までに教えて頂けると有り難いです。
私の場合、曲が決まっていれば事前に相当予習しますが、実際演奏するときはその場の歌心でのみ演奏しています。
「練習は相当して、本番ではその練習を意識しない」という方法です。
ただ、事前に仕込む方法はとても良いと思います。感動的なスピーチをする人の文が、事前に準備をしたものだったとしても、聴いている人が感動することに変わりはありません。自分の納得のいく演奏をするほうを優先するのが良いと思います。
アドリブは色々な解釈があると思いますが、私は言葉に例えて考えています。
言葉は1度はどこかで聴いたり、学んだりしていなければ使い方が分からないように、アドリブも、1度はどこかで聴いたり学んだりした音でないと使えません。
なので、アドリブは今まで自分が学んできたものの中から、自分が伝えたいと思う音を無意識に選んで演奏していくことと解釈しています。
アドリブに関して迷ったときは、言葉に例えて考えてみると答えが出てくると思います。